原題は”The Imitation Games”という,電気・情報系の人なら誰でも知っている「チューリングマシン」の由来となった数学者アラン・チューリングの生涯を描いた2014年の映画です.ベネディクト・カンバーバッチが主演したので日本でも話題となり,ご存じの方も多いと思います.2018年1月3日の午後,MX-TVで放送していたので見ました.
苦労して成功を得て最後にスカッとする話ではありません.性格故,周囲からなかなか理解されない中で努力を重ね,恋人や同僚からの影響も受け,同僚と協調していくような努力もして,最終的には暗号解読器を完成させます.
性格については,先のNHKのドラマ「この声をきみに」の主人公と通じるところがあり,私の知っている数学科を出た先輩とも通じるところがあり,数学者ってこういう人が多いのかとへんに感心しました.端からは自己中心とみられるほど協調性が無く,得意なものには没頭して凡人には及びもつかない結果を出す,などなど.
しかし,暗号というのはなかなかやっかいな代物で,解読したことが敵に知られると,暗号化方法を変えられてしまい,その変更がほんの少しでも,これまで行ってきた解読のための手順をすべて繰り返す必要があります.つまり,これまでの努力は水泡に帰してしまうのです.
そこで,解読した暗号は,直接的には利用されず,統計的に連合軍が勝つような利用のされかたをしたようです.ここのところはちょっと難解でしたが,解読された暗号通信の情報を直接的に利用して,攻撃されようとしている1人の兵士,市民,1艘の船を救うのではなく,より多くの人たちを救う方向で利用したようです.したがって,結果的に暗号文から攻撃されることが解っていたのに少数だったため見殺しにされた兵士・市民は少なからずいたと言うことです.
チューリングの功績は50年間秘密というか,存在すらしなかったことにされ,その不名誉な扱いに対して,2009年にようやく政府が公式に謝罪したそうです.
しかし,これだけならば,ありがちでもないけど,ありそうな話ですが,実はこの話にはもう一つの重要なテーマがありました.それはセクシャルマイノリティへの差別です.
チューリングは同性愛者で,そのことで戦後,大学教授をしているときに逮捕されて有罪となり,一年間の懲役刑か,ホルモン注射による「治療」のどちらかを選ばされ,結果的にホルモン注射を選びました.そのことで衰弱して,映画では明確には因果関係は直接的には示しませんでしたが,41歳の若さで自殺してしまいます.
この,同性愛者を罰する法律は,1960年代まで存在して,6万人もの人たちが有罪となったそうです.
高校生の頃見たモンティーパイソンで,男性同士のラブシーンがあり,顔と顔が近づいたところで止めて,「これがテレビの限界」っていうスケッチがあったんですが,ほんの10年前まで,同性愛を罰する法律が存在していたからこそ成立するブラックジョークだったんだって,40年経って知りました.