これまでも都合の悪い国会内外での発言や資料をないことにしてきた現政権が,「老後の生活に2000万円必要」という金融庁の報告書をなかったものにしようとしていますが,さすがに,都合良く物忘れしてきた国民もこればかりは忘れることはないでしょう.
そこで,御用マスコミや提灯持ち識者,与党の地方議員がはじめたのが,「年寄りの生活に月25万円も必要なかろう」,というキャンペーンです.
金融庁の報告書は,モデルケースとして月々25万円生活費がかかるが,年金支給額は20万円なので,いくつまで生きると2000万円必要になるというような,明快なものです.
で,御用・提灯持ちマスコミ・識者・与党系地方議員が始めたのが,高齢者の生活費が月額25万円も必要か,という根拠のない主張です.
筆者は,目前の「老後」に備えて,支出の詳細な分析を始めたところですが,25万円もかなり難しいと感じています.
「高齢者の食費が6万円もかかるか」と発言した与党系議員がいるそうですが,1人1食300円で十分な食生活が維持できるわけないでしょう.庶民としての生活経験がないからそういう発言が出るわけで,言うんだったら自分で月6万円で十分満足のいく食生活を実際にしてから言ってもらいたいものです.
(筆者の場合)食費の次にウエートを占める光熱水料を減らすとなると,風呂と洗濯は2日に1度にするなどが必要となります.これでは憲法で保障されている健康的で文化的な最低限度の生活が送れなくなります.
筆者が幼少の頃は,風呂は銭湯通いで,それこそ2日に1度くらいだったと記憶していますが,生活水準は1度上げたら下げられませんし,入浴の頻度を下げなければならないなんて,もはや先進国ではありません(筆者の幼少期,日本は先進国ではなかった).
月々の生活費以外に,年に1度必要な社会保険料やその他の税,そして数年に1度,冠婚葬祭や家内外の補修,大型家電や自家用車の買い換えなどといった突発的な出費が必要となります.これらもならして,月々の経費に上乗せする必要があります.
今後も,与党系議員や提灯マスコミ・御用識者が声を高くしてくると予想される「年寄りは生活水準を下げろ」キャンペーンに断固抗う所存です.
余談
この報告書はいろいろ興味深いデータが載ってます.特に目を引いたのが,世代別世帯収入のグラフです(p9).
それによると,2014年における65〜74歳の世帯(主)の収入は約460万円となっています.噂には聞いてましたが,今の年寄りの年金水準は非常にというか異常に高いですね.
年金機構から来るはがき^^; の予定年金額と,自分で積み立てた個人年金を足して,家人が今のバイトを続けたとしても到底この額におよびません.
余談2 〜勘違いしている人が多い〜
それから,2000万円の件をいろいろ勘違いしている人が多いようですが,この試算のモデルケースはかなり恵まれた条件です.厚生年金がかなりいい条件でもらえ,持ち家でローンは完済ということです(また,光熱水料や国民健康保険税が比較的安い大都市圏在住と推測されます).
これらの条件から外れたら,もっと必要です.場合によってはそれこそ何倍も.
高齢者の生活の多様性も踏まえて,1000〜3500万円必要という試算もあるようです.しかし,0〜3500万円ではない.どうしたって,最低千万オーダーの金がないと,老後は生きられないって事のようです.
もちろん,節約を趣味にする人にしてみれば6万円はたやすいレベルかも知れませんが,普通は無理です.
これは地方都市に住んでいるため,上下水道料金が高く,ガスもLPGで割高となっているという事情があります.
本来,老後のための蓄えは,突発的な出費のためにあるはずで,経常的な生活費で食い潰さないといけないというのでは,もはや先進国の社会保障の体をなしていません.