2020年8月15日(土)夜放送された,標記の番組見ました.
私が生まれたのは戦後十数年経ってからで,子供の頃,周りの大人の多くは,いろいろな形での戦争経験者たちでした.
何人かの伯父たちは,軍人として戦地に赴き,負傷しながらも生き延びることができたそうです(詳細は聞いたかも知れませんが忘れました).
幸いなことに,空襲や機銃掃射などで負傷したり命を失った近い親戚はいなかったようですが,栄養失調で亡くなったり,薬品や栄養不足で病死した,間接的な犠牲者はいたようです.
子供のころからずっと抱き続けていた違和感があります.旧軍人は,戦死したら旧国営の神社に神としてまつられ,また軍人恩給があり,多くの政治家たちが,旧軍人・遺族に向き合っている.その一方,民間人として,直接・間接的に戦争で命を落としたり,怪我をしたり,財産を失った人々やその遺族は政治家たちには完全に無視され,なんの保証も受けていなくて,今で言う「自己責任」扱いされていたことです.
もちろん子供のころにはこんな一言でまとめられるような気持ちではなく,漠然としていましたが.
このNHKスペシャルを見て,民間人に保証をし始めたら際限なくなる,という漠然とそんなところだろうと思っていた理由が,政府の姿勢の根本であることが,資料や当事者の証言から裏付けられました.それでも,民間人への保証の運動もある程度の規模であった中,それらが完全に黙殺されたことはまだ納得できませんでした.しかし,戦後の厚生省の官僚の多くが,旧軍の官僚たちだったという事実を聞いて腑に落ちました.
文民だったとはいえ,旧軍の官僚たちを公職に戻したことで,戦後の厚生行政が,戦後保証に関しては軍人恩給を復活された一方で民間人は完全無視というようにゆがんだり,石井部隊の流れをくむ企業が存続し得たりしたことにつながったんでしょう.
憲法の保障する,健康で文化的な最低限の生活を守るべき官庁の官僚たちが,その精神の真逆のことをしてきた軍出身だったとは.これは大きな間違いだったと思います.
今日の社会の病理である不寛容の原点は(不条理をそのまま押し通す姿勢という点で)ここにあると感じました.