NHKスペシャル「渡辺恒雄 戦争と政治~戦後日本の自画像~」

標記の番組見ました.最初はいきなりプロスポーツのありようをゆがめてきた野球チームが出てきたので,見るのをどうしようかと思いましたが,それなりに面白い話もあったので,結局全部見ちゃいました.

しかし,総合的な感想としては,いくら取材に応じてくれたからといって,取材対象とその盟友中曽根康弘を美化しすぎじゃないかと思いました.

また,無理があるなと思ったのは,渡辺と中曽根と田中角栄に戦争体験が共通しているって決めつけていたところです.たしかに死にそうになったことが何度かあったかもしれない点は同じかもしれませんが,意味もなく上官に殴られるような経験は兵卒であった渡辺と田中には日常だったに違いないですが,将校だった中曽根は2人たちを殴ったような上官の上のまたずっと上の殿上人のようなもんですから,戦争の日常という意味では根本的に全く異なる経験をしていたはずで,共通するのは死を身近に生きていたことだけで,他に共有するものはないでしょう.

たとえて言えば,火山噴火で同時に埋まったポンペイの奴隷と貴族かな.

まあしかし,戦争で経験した不合理・不条理に反発し,反戦,自由主義を根本としてその後の人生を歩んだはずの人が,かつては反戦,自由主義を旗印にしていたのに変質して,戦前の体制に戻そうとするようになった政党を,今日でもその「機関誌」を率い続けているんですから,実利主義とはよく言ったもんです.