夢千代日記

1月8日に,夢千代日記が放送されていた(第1シリーズ全5話の第1話)ので途中からですが見ました.作者の早坂暁が前年末に亡くなったので放送したようです.この日の翌日の未明に第2, 3話,さらにその翌日の未明に第4, 5話が放送されるというので,録画予約をして全話見ました.

本放送は,1981年2月15日〜3月15日だということで,その頃の私は卒論の大詰めの時期でした.修士課程に進学することもあって,たぶん2月か3月に下宿を始めたところです.下宿にはテレビはなく,大学の研究室には白黒テレビがありましたが,たぶん,本放送は見てないんじゃないかと思います.全編を見ても思い出す場面はありませんでした.

冬の山陰を舞台に,とにかく映像も話も暗いです.登場人物の背景やそれぞれが現在抱えているものも,どれひとつとってもしあわせではないというか,そうとうに不幸です.救いようのない厳しい境遇の人たちの話だけど,最後に少し救われるようにして,人の温かみを表現しようとしたのでしょう.

話としてはそれなりの感動はありましたが,自分の好き嫌いからすると,まあどちらでもないです.

それにつけても登場人物はやたらタバコを吸ってます.これは非喫煙者からしたら拷問であり,今日的には間違いなくハラスメントです.喫煙者たちはこれだけひどいことを,非喫煙者,青少年,妊婦たちにしてきたんだってことを自覚した上で生きて欲しいものです.

このドラマは,清純派女優だった吉永小百合の後の活動への転換点になったそうですが,セリフもナレーションも聞き取りにくいのが残念でした^^; いや,演技力とかじゃなくて音響技術の問題なのでしょう^^;;

他の配役としては,樹木希林はたいしたもんだと思いました.

卒研は,片道2時間今日かけて通学しましたが,そのまま修士課程も通い続けるのは無理だろうということで,大学から徒歩15分くらいのところに下宿しました.引っ越した時期については多少記憶が曖昧です.

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

原題は”The Imitation Games”という,電気・情報系の人なら誰でも知っている「チューリングマシン」の由来となった数学者アラン・チューリングの生涯を描いた2014年の映画です.ベネディクト・カンバーバッチが主演したので日本でも話題となり,ご存じの方も多いと思います.2018年1月3日の午後,MX-TVで放送していたので見ました.

苦労して成功を得て最後にスカッとする話ではありません.性格故,周囲からなかなか理解されない中で努力を重ね,恋人や同僚からの影響も受け,同僚と協調していくような努力もして,最終的には暗号解読器を完成させます.

性格については,先のNHKのドラマ「この声をきみに」の主人公と通じるところがあり,私の知っている数学科を出た先輩とも通じるところがあり,数学者ってこういう人が多いのかとへんに感心しました.端からは自己中心とみられるほど協調性が無く,得意なものには没頭して凡人には及びもつかない結果を出す,などなど.

しかし,暗号というのはなかなかやっかいな代物で,解読したことが敵に知られると,暗号化方法を変えられてしまい,その変更がほんの少しでも,これまで行ってきた解読のための手順をすべて繰り返す必要があります.つまり,これまでの努力は水泡に帰してしまうのです.

そこで,解読した暗号は,直接的には利用されず,統計的に連合軍が勝つような利用のされかたをしたようです.ここのところはちょっと難解でしたが,解読された暗号通信の情報を直接的に利用して,攻撃されようとしている1人の兵士,市民,1艘の船を救うのではなく,より多くの人たちを救う方向で利用したようです.したがって,結果的に暗号文から攻撃されることが解っていたのに少数だったため見殺しにされた兵士・市民は少なからずいたと言うことです.

チューリングの功績は50年間秘密というか,存在すらしなかったことにされ,その不名誉な扱いに対して,2009年にようやく政府が公式に謝罪したそうです.

しかし,これだけならば,ありがちでもないけど,ありそうな話ですが,実はこの話にはもう一つの重要なテーマがありました.それはセクシャルマイノリティへの差別です.

チューリングは同性愛者で,そのことで戦後,大学教授をしているときに逮捕されて有罪となり,一年間の懲役刑か,ホルモン注射による「治療」のどちらかを選ばされ,結果的にホルモン注射を選びました.そのことで衰弱して,映画では明確には因果関係は直接的には示しませんでしたが,41歳の若さで自殺してしまいます.

この,同性愛者を罰する法律は,1960年代まで存在して,6万人もの人たちが有罪となったそうです.

高校生の頃見たモンティーパイソンで,男性同士のラブシーンがあり,顔と顔が近づいたところで止めて,「これがテレビの限界」っていうスケッチがあったんですが,ほんの10年前まで,同性愛を罰する法律が存在していたからこそ成立するブラックジョークだったんだって,40年経って知りました.

ブーメラン

そう言えば三流マスコミが好きな言葉に「ブーメラン」がありますね.でもあれを多用するっていうのは,オーストラリア原住民に対する侮辱です.

三流マスコミの報道事例を見れば自分で投げた,敵を攻撃する“ブーメラン”が戻ってきて自分に当たってケガをするようなニュアンスでブーメランと言っているわけですが,オーストラリアの原住民は知恵があります.ざっとネット検索すれば解ることですが,ブーメランは戻ってくるけど,小型・軽量なため,投げた本人がケガなどしようがありません.そして,人に当たってケガするような狩猟用の大型のものは戻ってきません

そんなことも理解しないで(調べもしないで)「ブーメラン,ブーメラン」って,鬼の首を取ったように使うマスコミは○×まるだしです.

獲物を捕る大型のもの.
大型のものはそもそもブーメランではなく,別の名前で呼ばれるようです.自分で調べてください.

子どもたちに誇れる仕事を。

他でもない,独占禁止法違反の疑いで東京地検特捜部と公正取引委員会の家宅捜索を受けているゼネコンのひとつ,清水建設のキャッチフレーズです.

自社の製品をうまい,素晴らしいと宣伝するのは,まあしかたないことかもしれませんが,自社が良い会社だ,誇れる会社だと言っていたら,まともな感覚を持った人ならうさんくさいと感じるに違いありません.

いつも見る番組で,清水建設のCMがさんざん流れます.子供たちを登場させ,挙げ句に誇れる仕事をというキャッチフレーズを聴かされて食傷してました.この期に及んであのCMを恥も外聞もなく流すかどうか,週末のそのいつも見る番組が楽しみです.

冤罪

昨夜(2017/12/18)のNHKスペシャル「冤罪が奪った7352日」を見ました.ひとことで角界風に言えば,非常に重い話です.

物証がほとんどないから,状況証拠から警察・検察が事件のストーリーを考え出し,精神的に追い詰めて,それに沿う自供をとるという,絵に描いたような冤罪事件です.無期懲役が確定してからも戦い続けた冤罪被害者の女性はたいしたものだと感心しました

大昔に見たサスペンスドラマ「戦後最大の殺人鬼 勝田清孝に間違えられた男」で,石立鉄男演じるかなりタフな主人公が,最後に,「まさか自分が『自供』に追い込まれるとは思ってもいなかった」という趣旨のセリフを言ったのを覚えています.

後に弁護側,検察側双方が実験をして同じ結果になったように,密室にガソリンまいてライターで火を付けたら,火を付けた人がやけどをしないわけがないのに,裁判官は,そんな当たり前なことに気がつかなかったのかというところにも,呆れるというか憤ります.それほどまで捜査関係者・司法関係者って,理科音痴なんでしょうか(実際,理科音痴以外あり得ない結論で導いた判決って結構あるようですね).

事故で娘を失って,自分がその犯人にされちゃうんだから,自分がその立場だったら,甚だしい絶望感に支配されて何もできないまま,社会から抹殺されてしまうだろうなと思います.

それだけの精神力がある人でも,「自供」させてしまう警察の取り調べは,不当と言うより非道です.