東日本大震災で,釜石の小中学生には津波による犠牲はほとんどなく,「釜石の奇跡」と呼ばれていますね.
10月から,たぶん再放送だと思うのですが,放送大学で,釜石の防災教育に尽力された群馬大片田教授の講義が放送されていて,録画して見ています.
それを見ると,防災教育というのは並大抵の努力ではないな,とつくづく感じます.ちょっと知識を教えるような形の防災・安全教育をする程度ではできないもので,対話的な教育と,訓練の繰り返しといった,たゆまぬ努力のたまものです.
細かいことは,片田教授の講演録や書き物があるんじゃないかと思いますが,講義を聴いていて,個人的にポイントだと思うのは,
- 大人が逃げない
- 避難はお上が指示してくれると思っている
の2点ですね.ふつうはどこでも,津波注意報や警報が出ても大人はまず逃げないということです.残念がら解ります.学術的には「正常性バイアス」といわれるやつです.まあ,俗に言えばオオカミ少年って言うやつです.
まあ,これはしょうがないんですよね.とにかく台風の進路にしても何にしても未来のことを正確に予測はできないんですから,津波がくる可能性がある程度あれば,来ない可能性のほうが高くても,注意報や警報を出さざるを得ない.だから,めんどうでも毎回逃げて,津波が来なければよかったねといって家に帰るようにしなければならない.真夏でも,真冬でも,深夜でも.これは,自分でもできないと思います.
これを釜石では子供たちに徹底的に教え込んだわけです.一方的ではなくて,教える方も子供たちも納得するような方法で.
もうひとつの片田教授の指摘(で,わたしがポイントと思ったのは)は,日本に暮らす人々の防災マインドが常に受け身ということです.これは防災に限ったことではないですが,防災に関する情報や避難の指示などは,みんな上から来る.特に弊害が大きいのは,ハザードマップで,釜石市でさえ,ハザードマップで安全とされた区域の人たちの犠牲が多かったとのことです.
片田教授が行っているような地道な防災教育を全国の津波の被害想定地域で行わないと,悲劇は繰り返されることになると思います.