70年

今朝は,早く目が覚めて,土曜だから昼寝もできるので,二度寝しないでテレビを見てました.

NHKの10分間の番組「あの人に会いたい」で,作家の井上光晴(1926〜1992)が紹介されていました.

今年は,敗戦70周年と言うことで,特に「語り継ぐ」と言うことで,戦争体験を風化させない努力,取り組みについて,テレビで見ることがこれまでになく多かった様に思います.

区切りのいい年ですし,実体験した人たちは高齢化が進む一方,これまで,戦争について口を閉ざしていた体験者たちの多くが今になって語ろうとし始めたという動きも多かった様に感じています.

しかし,実際に戦中・戦後を体験した,作家である井上の言葉は強力です.こういったら,戦争を体験し,体験談を語り継ごうとしている,一般の人たち(当時の兵士にしても民間人にしても)には失礼ですが,やはり,「言葉」で生きてきた作家の一言一言のもつエネルギーは違います.

たった10分の番組なのに,強力な印象が残りました.

長崎の被爆の前日を描く,『明日 一九四五年八月八日・長崎』を読んでみようと思いました.

追記

『明日 一九四五年八月八日・長崎』は,Kindle, iTMSともに400円で売ってました.中古の文庫を買って自炊しようかと思いましたが,送料込みで400円を超えるので,今回はiTMSから買いました.

原田実「江戸しぐさの正体」

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どうも,ここのところ,本が読み続けられない^^; 根気もないんでしょうけど,なかなかおもしろい本に出会わないです.そこで,気楽に読めそうな本を読もうと思い,たまたまSNSで見聞きした,えせマナーである「江戸しぐさ」を糾弾する内容の本書を買ってみました.

「江戸しぐさ」については,多くの皆さんと同じと思いますが,公共広告機構のCMで見たのが最初だと思います.あまり深くは考えませんでしたが,嫌なCMだと感じました.古今東西,マナーを押しつけるCMほど嫌味な物はありません.これがマナーなんですよって言うってことは,あなたはマナー違反をしてますよと指摘するのと同じです.

そして,そういうマナーの指摘は,本当に必要な人には届かない^^;

それと,こんなマナーがほんとに江戸時代にあったんだろうかとも漠然と感じていました.

最近になって,SNSなどで,そもそも江戸しぐさなどというものは,江戸時代には存在しないものだという情報を見聞きして,逆に関心が強まりました.

そんな状況だったので,さくさく読み進みました.研究者の本だけに,わかりやすい組み立てになっています.

前半では,江戸しぐさについて,史実との不整合性を挙げ,いずれも本当の江戸にはあり得なかったことを指摘します.

中には素人の知識でもおかしいと感じるものもあります.たとえはトロです.落語なんかに出てきますが,冷凍技術のなかった昔は猫またぎと言って,食用にはならなかった.それを江戸時代の食事マナーの引き合いに出すのはヘンな話です.

続いて,江戸しぐさを発案し,普及させてきたキーパーソンである人たちの経歴や時代背景から,オカルトともいえるこのえせマナーがどのように発案され普及させられてきたのかを考察します.

江戸しぐさの「発案者」である,芝三光氏は,子供の頃は横浜で軍国教育を受け,成人したら今度は民主主義に切り替えさせられ,GHQの会員制クラブでアルバイトをして西洋的マナーに心酔したようです.そうした経歴と江戸しぐさとの関係が本書ではよく考察されています.その芝氏の脳内に描かれた理想郷が,江戸しぐさにあふれている現実にあった江戸ではなく,パラレルワールドの江戸だったわけです.

今日では,この史実に基づかない江戸しぐさが,自民党と文科省の働きで,教育現場に持ち込まれてしまいました.

こういうえせ史実を本当のこととして教育現場に持ち込むことの危険性を主張し,結ばれています.

実は,私自身は,著者のいう危険性について,そこまで危険なこと,とは現実問題としてはとらえていなかったのです.しかし,今日の北朝鮮で行われている指導者たちの神格化についても,わが国で戦前行われた軍事教育についても,ねじ曲げた史実に基づいていますから,こういう段階から注意していく必要があります.

小さい嘘に嘘を積み重ねてやがて大嘘になる.

そして,自民党と文科省といった,権力側が関わっているところが,なんともうさんくさい.

二間瀬敏史「時間旅行は可能か」

タイムマシンの話ということなのですが,エンジニアリング・メカニカルな話はゼロです.ですから,タイムマシンとは言わず「時間旅行…」というタイトルにしているのだと思います.

ひとことで言えば,今日的な物理学に照らして、時間旅行が可能だとしたら、ワームホールを利用することになるが、ワームホールの性質や,エントロピー増大の観点からダメでしょうというものです。

高校生以上で,物理に興味のある人なら読める本だと思います.また,特別つまらないというものではありませんが,前述の様に,具体的な話がありません.

まあ,タイムマシンとはそれだけのものなのかも知れませんが,「錬金術」のように,タイムマシンを研究・開発した山師たちのエセ科学史的ものがあれば,おもしろかったかもしれません.二間瀬敏史_時間旅行は可能か

堤未果「ルポ 貧困大国アメリカ」

著者は,アメリカの大学・大学院を卒業・修了し,米国野村證券に勤務しているときに,911に遭遇して,ジャーナリストに転身したそうです.

この本が出版されたのは,2008年で,ルポとしてはだいたい2006年頃のものです.それからアメリカの状況は,よくなっていることはないはずで,現在もこういうひどい境遇の人たちが多数いるのかと思うと,なんとも読むのが辛かったです.

おおざっぱに言うと,アメリカの貧困・格差拡大は日本の多少意識の高い人たちが考えているレベルと照らしても,とんでもなくひどい状況にあると言うことです.

そして,なぜ,格差拡大が改善されないか.一つには,日本にも見られますが,貧しい人たちが,そうなったのはある意味,自己責任であるという考え方が蔓延していることです.

しかし,今日のアメリカでは,たった一つの病気やけがや失業で,(貧しい人たちに冷淡な側の)中の中〜上クラスの人でさえ,貧しい側に転落しかねません.

もうひとつの大きな理由は,新自由主義の政治家たちと,軍事産業が一体化した軍産コングロマリットにとって,貧困拡大が都合が良いということです.貧しい人たちを戦場に送り込む仕組みができあがっています.貧しい人々を戦場に送り込むルートは正規軍に限らず,州兵,後方支援の民間企業などで,傭兵のようなものもあります.

たいていの人たちは甘い言葉に半分騙されて戦場に送られて,無事に帰ってきたとしても,一時的に小金をもてるだけです.戦地で病気やけがをしたり,PTSDなどを患ったら,帰国しても前よりも窮地に追いやられることになります.

このルポでは,ブッシュ(子)時代のアメリカの市民生活の荒廃をもたらす政策の数々によって,苦境に立たされた人々の声が紹介されています.

オバマ政権に変わっても,議会は新自由主義の側の議員が多数派なので,悪くなる速度を遅くするのが精一杯です.

そして,このとんでもないアメリカの現状は,日本の遠からぬ将来です.

「中国行きのスロウ・ボート」村上春樹

 

久しぶりに1冊読み終えました.

ここのところいろんな本を読み始めては,途中で読むことに耐えられなくなり,読み散らかしてきました.耐えられなくなる理由はいくつかありますが,基本的に面白くないんです.

読書家の友人の勧めでアマゾンのマーケットプレイスから中古で買った,「中国行きのスロウ・ボート」は面白かったからと言うよりは短編集なので最後までたどり着けたと思います.

その友人から聞いた通り,本のタイトルにもなっている「中国行きのスロウ・ボート」は面白かったです.

他の作品は村上が自分の作風を築きあげるための実験過程のような感じがします.安部公房をたくさん読んだ自分としては,安部公房になろうとして,なりきれなかった,あるいは,なるのをやめたと言うような感じを受けました.

貧乏な叔母さんの話,ニューヨーク炭鉱の悲劇,カンガルー通信,そしてシドニーのグリーンストリートは,正直全く理解不能です(あらすじや,細かい描写はもとより,その短編を書く意図そのものが理解不能^^; ).

土の中の彼女の小さな犬は,他の安部公房テイストと言うよりは,星新一的と感じました.

なんとかというかまあ,苦もなく読了しましたが,正直なところ村上春樹の次の1冊を読んでみたいという気持ちにはなれませんでした.