円安ではなくて所得格差

CBC制作の午後のワイドショーをときどき見ています.

今日は行動制限が解除され,海外からも観光客が多く来ているというニュースをやっていました.オーストラリア人観光客に聞いたら「(オーストラリアだと外食は)一食2,500円くらいはするのに日本だと3食たべられる」といっていました.それを受けて,海外観光客増加の要因の一つに「円安」を挙げていました.

しかし,このオーストラリア人のインタビューを受けて「円安」というのは浅はかにもほどがあります.この記事を執筆している2023年5月2日(火) 14:18現在1AUD=92JPYです.これはここ十年で見て少し高め(円安)ではありますが,1回分の食費で3回も食事ができるほどの高さではありません.

筆者がシドニーにいたころ,わずか一年の間でしたが,1AUDは85JPY(1996年3月)から100JPY(1997年6月)までほとんど単調に増加しました.しかし国内の物価に大きな変化はありませんでした.また,当時のオーストラリア国内の物価は日本と比較して少し安いくらいでした(日用品,食料品や外食).

その後26年経ってもオーストラリアドルの水準は日本円に対して大きく増減していません.ところが食費が3倍と言うことは物価が上がったということでしょう.オーストラリア国内にも格差はあると思いますが,賃金水準もそれに近いくらい上がっているということになります.

そう言えば,少し前NHKで,海外で短期間働いて稼ぐ日本人の若者たちについてのレポートがありました.いくつかの例のうちの一つはオーストラリアのサーフィンで有名なビーチ(ゴールドコーストではなかったと思う)近くの農園でパートタイマーとして働いて,勤務時間外はサーフィンを楽しむというものでした.パートとは言え日本国内の正規労働よりも賃金水準が高くて,しかも時間外労働は一切ないのが魅力ということでした.

ですから,冒頭のニュースのインタビューを受けた解説は,オーストラリアなどからの海外観光客の増加は「円安」ではなくて「所得格差(物価の格差)」とすべきでした

1年3か月で17%円安(豪ドル高)になったわけです.
欧米の先進国からの観光客についても,円安より所得格差の方が大きな要因と思います.

親もカスが良い

「子はカスが良い」はちびまる子ちゃんに出てきた「迷言」です.親もカスが良いんじゃないかと最近感じています.

残念ですが自分の子供をいじめ殺してしまうような極端に悪い親もいます.では他の親は良い親なのかというと,かなりひどい親も少なくないと思います.

例えば以前読んだ大和彩著「失職女子」の親や,女優東野なぎこさんの親,フィクションでは宮部みゆきの杉村三郎シリーズの三郎の母親などです. “毒親” に分類される親たちです

世の中全体の親の良い悪いも統計的には,ガウス分布で真ん中に普通の親の山があって左右(良い悪い)に中央から分かれるほど数は少なくなっているはずです.

せっかくガウス分布にしたので偏差値で言うと,悪いほうは偏差値40以下が毒親,30以下は犯罪とのグレーゾーンの虐待で,20以下だと完全に犯罪レベルでしょう.良いほうでは偏差値60以上は良い親でしょうが,それから上は何が「良い親」に寄与する要因か解らない気もします.

良い親悪い親はまずは “子供にとって” という評価軸がありますが,極悪な親でも子は他の親と比較ができないのでそこまで悪い親だとは感じないようで,それゆえ虐待される子供たちが不憫でなりません.

ある程度以上悪い,偏差値30以下の親は子の視点からでなく世間一般の評価で測る必要があります.ひどいレベルのネグレクトや虐待は第三者から解るはずです.

その世間一般評価の視点で,良いほうの親は評価できるのか,という問題があります.例えば,子を高校に行かせずに大学入学試験検定(大検)に合格させ東大に入学させた親は,(親としての)偏差値的には80以上にデビエートしていると思いますが,それは良い悪いの軸の80なのかというと,全然別の評価軸だと思います.

アメリカの天才少年が飛び級で高校生くらいの学年で一流大学を卒業したけど,もう一度高校に入り直して高校生活を経験してとてもしあわせだと言うドキュメンタリーを見たことがあります.もちろん個人個人で高校の経験がしあわせか不幸かは違ってきますが,自分の主義・価値観で子に高校生活を体験させない親が,親の良い悪いの偏差値が客観的に80以上であると見るのは難しいと思います.

また,世間一般でなく子から見た視点の親に対するもう一つの重要な評価軸として「好き-嫌い」というのがあります.子から見た親の良い悪いの評価と大きな相関があり,たいていの人は「親はそこそこ良い親」と思っていて,「好き」だと思います.しかし,親は尊敬しているけど嫌いという人も少なくないと思います

では親が良い親だと子はしあわせなのか.これも子供の視点からと客観的な評価とは異なってくると思います.

個人的には親はある程度カスな方(といっても虐待するような親じゃ困りますが)が子供の独立心・向上心が養われて良いんじゃないかと最近では考えています.

多少の調査をしましたが,ノンフィクション作家石井光太さんの記事に事例がいろいろあるようです.この「9浪で医学部受験失敗…31歳女性が母親をメッタ刺しの特殊事情」などは生々しいです.
先日見たNHKの「プロジェクトエイリアン」の出演者の一人がそうでした.

NHK: ルポ 死亡退院 〜精神医療・闇の実態〜

昨夜は,サタデーニュースウォッチ9を見てから,ぼちぼち寝ようかなとしていたら,標記の番組が始まり,関心を引かれ,結局最後まで見てしまいました.

最近になって看護師らによる虐待や暴力が明るみになった滝山病院のルポです.

精神病院の虐待・暴力事件は昔からありますが,番組ではその実例として2つの病院の事件が紹介されました.

あれ,「朝倉病院事件」は紹介しないのかなと,不可解に思いましたが,なんと,滝山病院の現院長が朝倉病院の事件当時の院長だったという,なんとも恐ろしい現実が番組の後半に明らかにされました.朝倉病院事件もその時に紹介されました.

もしフィクションだとしたらかなり安易な設定ですが, “現実” です.悪魔のような所業を行った人物が場所を変えてまた悪魔のような所業を繰り返している.

滝山病院の内部告発による朝倉院長の発言(録音された音声)を聞くと,病院内の虐待や暴力が現場だけの問題ではなく,上から下までそういう体質であることがよく解ります.

このような人として許されぬ行為を行っている病院が,世の中の必要悪として存在するというのは何とも悲しいことで,その存在をみて見ぬ振りをして明らかにしてこなかった関係者たちの人としての罪は重いと思います.

たぶん,この種の事件で最悪だったと記憶しています.

冬の輪舞(完)

ここのところ欠かさず見ていた標記のドラマが完結しました.

最後はちょっと無理がありましたが,何とかハッピーエンドでした.とはいえ現実の話だとすると,この先どうなるのか不安要素が多数あります.フィクションなんでどうでも良いのでしょうが😓

前の感想にも書きましたが,1人の人生に1度あるかないか(たいていの人には起こらない)ような大事件が後半も次から次へと起こり続けました.

その原因は借金などの外的要因の他,遠野なぎこ演じる主人公のしのぶと,もう一人の重主要人物千鶴子の心の動きにもあります.この2人以外も主要人物の心は大きく動くので,人の心のありようとして一貫性がなさ過ぎるんじゃないかと感じることが多々ありました.

例えばしのぶは最初は百合を絶対に千鶴子に渡さないといいながら,後になると百合は千鶴子に育てられた方がしあわせだと言い切ります.もちろん途中で状況に大きな変化があったわけですが,心の揺れを通り越して,別人の考え方になったんじゃないかと感じるほどの心変わりです.同様の心の大きな揺れは千鶴子にも,母の則子にも,しのぶの母静子,父龍作にもありました

劇的に話を展開するのに無理矢理主要人物の心を変えてしまう,というか変えざるを得ないということなのだと思います.

フィクションだから,エンターテインメントだからと割り切って楽しむのが正しい見方なのでしょう.

いや,「最後も」
例えば都内の条件の良い土地とはいえ老朽化しているであろう大丸病院が建っている土地を売却して3億円からの借金は帳消しにできたのか,今後の大丸家の生計はどうたてていくのか,生体腎移植をした母子の今後の健康に問題はないのか等々
弟の澄夫と叔父の裕喜は例外的に一貫していました.
百合は強烈な心的外傷を受けて記憶を失った時期を挟んでいるので除外しても良いかも知れません.
龍作はそもそも人格に大いに問題があるので除外しても良いかも知れません😓

いくつかのドラマの感想

ご注意: いわゆるネタバレが含まれますのでそういうの気にする人は読まないでください.

まずは,3月12日(日)が最終回だった,ブラッシュアップライフです.やはり全10話でした.

シリーズの後半は完全に心温まる友情物語で終わるのかと気楽に見ていたら,第9回で毒をもるなんていうサスペンスになってしまい,ひやひやしました.しかし,鍵を握る女とも言うべき三浦透子演じる元北熊谷市役所の後輩で第10話現在CAをしている河口美奈子の再びの登場です.彼女は主役の近藤麻美(安藤サクラ)たちが毒をもろうとしていた中村機長(神保悟志)を日頃から嫌な上司と思っていたところ,今回のフライトが中村機長の不倫旅行とわかり,そのことを奥さんに密告したとのことです.中村機長は毒をもられなくても搭乗できなくなったというなんともアクロバティックな展開となりました.

その後の展開は若くして機長になった麻美も宇野真理(水川あさみ)も最大の目的を果たしたことであっさりその職を捨てて故郷に戻り市役所職員と保育士にそれぞれ転職して,門倉夏希(夏帆),米川美穂(木南晴夏)となかよし4人組として幸せに長く暮らしましたとさという,安心して見終われる結びになりました.

もともとなのか,子供番組に長く出演して培われたのかバカリズムの優しさが現れたと感じました.

2つ目は相棒の最終回です.相棒はシリーズ化前からずっと見てきましたが,今回は正直なところがっかりです.日本をこんなにしてしまったのは団塊の世代で,渡辺いっけい演じる私塾「ながとろ河童塾」塾長のいうとおりです.それを杉下右京が,塾長に向かって筆者の世代を名指しして,何もしなかったのは同罪だ的な指摘をしました.これは的外れで,悪いのは団塊の世代で,我々の世代は犠牲者です.非常に気を悪くしました.右京さんには「僕としたことが」と反省してもらいたいです.

3つ目は,ここのところ毎日楽しみに見ている冬の輪舞(2005年にフジテレビ系で放送された連続ドラマのチバテレによる再放送)です.とにかく普通の人には一生に一度起こるか起こらない(起こらない方が多い)かのような大事件が何度も起こり,ありえない偶然が何度も起こるというフィクションの極みとも言うべきドラマです.

全62話のうち第6話くらいから見ています.たまたまその回を見てから続けてみているわけですが,バラいろダンディで遠野なぎこを見ていると,誰しも感じると思いますが何か普通じゃない影というか重たいものを抱えているように見えるのですが,この冬の輪舞はまだ26歳の作品で,若々しいけどしっかりした演技をしていて,関心を持ったわけです.

その後,ネット検索をすると,遠野なぎこの実際の人生は下手をするとこのドラマよりも壮絶なのかもしれないと知りました.

今日の放送は第47話で終盤に来てます.楽しい内容のドラマではないですが,ますます楽しみです.

ついでに河口美奈子(三浦透子)も.
河口美奈子はやはり北熊谷市役所職員.
Eテレ ビットワールド.